[2019S教養学部前期/後期課程]古典ギリシア語初級(前半)

松浦高志の授業用ページ

目次

授業概要

以下の記録の正確性は保証しない.

開講
平成31年度/令和元年度(2019年度)Sセメスター
科目名(前期課程)
古典語初級(ギリシア語)I
科目名(前期課程:英語)
Classical Greek I (Introductory)
科目名(後期課程)
共通ギリシア語(11)
科目名(後期課程:英語)
Greek (11)
開講日時
金曜5時限(16:50–18:35)
時間割コード(前期課程)
30598
時間割コード(後期課程)
08A9211
単位数
2.0
科目区分
総合科目L(言語・コミュニケーション)
教室
1号館107教室
教科書
水谷智洋『古典ギリシア語初歩』(岩波書店,1990).
履修人数:古典語初級(ギリシア語)I
15名
履修人数:共通ギリシア語(11)
7名
学期末試験受験人数:古典語初級(ギリシア語)I
14名
学期末試験受験人数:共通ギリシア語(11)
3名

授業日程

教養学部の通常の授業日程に従う.教養学部の授業日程に変更があった場合はそれに合わせる.以下と教養学部の授業日程の間に齟齬があった場合は教養学部の授業日程の方に従う.

  1. 2019/04/05: 4月12日は入学式のためなし.
  2. 2019/04/19
  3. 2019/04/26
  4. 2019/04/30: 休日だが金曜日授業.
  5. 2019/05/10: 5月17日(金)午後は五月祭準備のためなし.
  6. 2019/05/24
  7. 2019/05/31
  8. 2019/06/07
  9. 2019/06/14
  10. 2019/06/21
  11. 2019/06/28
  12. 2019/07/05
  13. 2019/07/12

学期末試験略解・講評

略解

  1. よくできていました.
  2. よくできていました.
  3. よくできていました.
  4. おおむねよくできていましたが,«Λ»を‘A’などで転写してある答案がありました.大文字はあまり慣れていなかったかもしれません.
  5. aはνῑκήσωですが,νῑκᾱσω(ᾱにアクセント)としてある答案がありました.*ᾱ > ηは覚えておいてください.
  6. aのἠξίουνが難しかったかもしれません.本当は母音融合の小テストもしておきたかったところですが……
  7. bのἔδειμαが難しかったかもしれません.
  8. 形容詞の性を正しく理解できているかどうかを試す問題でした.「彼女は美しい/立派である」が答えです.よくできていました.
  9. μόνοςが述語的位置にあるので,「その(あるいは「彼の」など)息子は一人でシチリア島へ行った」です(日本語ではこのような場合「……中へ」の意味が含まれるので訳出しなくてよい).
  10. 「あなたは何が徳である/徳が何であると言うのか」が答えです(プラトーン『メノーン』71d).「なぜあなたは徳が存在すると言うのですか」でも○にしました.
  11. 「それはどのような徳か」が答えですが,正答はありませんでした.疑問代名詞は形容詞的にも用いられる(たとえば練習8.4で練習しました)ことはすぐには思い出せないかもしれませんので,思い出しやすいように(10)とペアにして出題しましたが,難しかったようです.
  12. 形容詞の比較級と,形容詞の名詞化を試す問題でした.νέοιςは「若い人たちにとって」ですが,少し難しかったようです(メナンドロス断片).
  13. よくできていました.
  14. 構文はおおむね理解できていたようですが,«τοῦτο» を「それ」ではなく「その人」で訳してある答案が多くありました.ὅμοιονも中性なので間違えようがないと思うのですが…… 「それは今彼が言ったことと同じだ」(プラトーン『パイドロス』69aを改変).
  15. 「行ったのは/行った人はその男だ」くらいの訳を期待していましたが,だいぶぎこちない日本語が多かったです.おそらくὅςの先行詞がὁ ἀνήρであると考えたからでしょうが,先行詞はοὗτοςの方です.ギリシア語の語順にまだ慣れていないためにそのように感じられたからかもしれません.
  16. 限定の対格の用法を理解しているかどうか確認する問題でした.主語を明示するように何度も注意していますので「本当に姿形が美しい」は0点としました.「彼は姿形の点で美しい」が答えです(ホメーロス『オデュッセイア』第17巻第307行).
  17. κατέβαλον, κατέφυγονはそれぞれアオリストですので,それぞれ「殺した」「逃げた」であり,「殺していた」「逃げていた」ではありません.ἄλλοιは「その他の者たちは」でも,「その他の騎兵たちは」でもどちらでもよいでしょう(クセノポーン『ギリシア史』第4巻第1章第19節).
  18. コンマを打って間違えないようにしてありますが,どこで句が切れるのかが難しかったようです.ὦはξύμμαχοιまで係ります.καὶ οἱ πατέρεςのκαίはκαὶ ἡμῶν αὐτῶνのκαίと対応しています.ἄπειροςは属格をとって「……の経験のない」の意味です(この属格は部分の属格で,「……の一部に触れたことがある」>「……の経験がある」の意味ですが,中級文法で学ぶような項目です).属格をとることを明記するかどうか悩みましたが,語彙集にも辞書にもわざわざ書かれていませんし,語順により間違いようがないと考えましたので明記しませんでした.οὐκ ἄπειροςは(よくある)二重否定です.「経験がなくない」→「十分に経験がある」のニュアンスであり,「経験がなくない」(→「少しは経験がある」)の意味ではないので,日本語に訳しにくいのですがそのあたりは甘めに採点してあります(トゥーキューディデース『戦史』第2巻第11章第1節を改変).

講評

感想(任意)を書いてくださった方,ありがとうございました.読みたい作品・作家にはホメーロス『イーリアス』,ピュータゴラース(彼自身は何も書き残していませんが),ヘーロドトス『歴史』,ソポクレース『オイディプース王』,プラトーン,アリストテレース(何でも,あるいは『自然学』『天体論』『生成消滅論』『気象論』など),マールクス・アウレーリウス『自省録』,何らかの詩がありました.なお,時間が足りない場合を除いては散文と韻文の両方をやる予定です.

授業の負担については,格変化と格の用法が覚えられないので練習問題を解くのが大変である,練習問題が負担である,などの感想がありました.また,練習問題をもう少しやりたい,あるいは練習問題の後半(おおむね6–10番)も解きたかったとの感想がありました.以下の感想とも関わりますが,授業で必須とされた課題以上のことをやりたいという場合にどのようにするかは検討の必要があると思いました.また,小テストについてはおおむねちょうどよいようでしたが,第12回のみは大変だったとの感想がありました.

授業の感想としては,まず,例年配布しているような教科書の補足のプリントがあれば,今年それを扱わないとしても配布はしてほしいという要望がありました.これに関しては,年度ごとに扱う順番や軽重を変化させていますが,少なくとも配布と簡単な解説だけは必ずしていますので,心配する必要はありません.次に,練習問題の答え合わせが間延びしてしまっていたのでテキパキとしてほしいとの要望がありました.これは練習問題の分量の問題と関連します.以前は練習問題はすべて扱っていましたが,そうすると解説は必要な箇所のみになってしまいますし,質問の余地もほとんどなくなってしまいます.実際にそのような感想が多く見られましたので,そのような感想が出ないようにそこから少しずつ減らしていって,今回のような分量になっています.もし今回の分量では物足りない,解説が長すぎるという声がある程度あるようであれば,練習問題の分量を少し増やそうかと思います.本当は練習問題の答え合わせの時間を圧縮して余った時間を使い,理解度に応じた複数のメニューを用意して追加でやりたいところですが,今のところあまりよい方法が見つかっていないので,とりあえずはこのままやっていこうかと思います.もっともAセメスターは履修者もだいぶ少なくなり,進度や分量もかなり多くなりますので,心配する必要はないかもしれません.

第13回(2019/07/12)

授業内容

  1. 学期末試験(100分間).

配布物

  1. 学期末試験問題.

第12回(2019/07/05)

授業内容

  1. 練習15.1–5.
  2. 練習16.1–5.
  3. 練習17.1, 3.
  4. 第18課.

配布物

  1. 「代償延長」.

課題

以下はAセメスター第1回(2019/09/27)の課題である.Aセメスター第1回のはじめの時間を使って答え合わせをする.

  1. 練習17.2, 4–7.
  2. 練習18.1–6.

第11回(2019/06/28)

授業内容

  1. 練習13.1–6.
  2. 練習14.1–6.
  3. 第15–17課.

課題

  1. 練習15.1–5.
  2. 練習16.1–5.
  3. 練習17.1, 3.

第10回(2019/06/21)

授業内容

  1. 練習11.1–5.
  2. 練習12.1–5.
  3. 第13–14課.

課題

  1. 練習13.1–6.
  2. 練習14.1–6.

第9回(2019/06/14)

授業内容

  1. 練習9.1–5.
  2. 練習10.1–5.
  3. 「小テスト(12)出題範囲」.
  4. 「学期末試験について」.
  5. 「母音融合」.
  6. 第11–12課.

配布物

  1. 「小テスト(12)出題範囲」.
  2. 「学期末試験について」.
  3. 「母音融合」.
  4. 「学期末試験問題(2018年度・見本)」(ITC-LMSには掲載しないので授業中に入手すること).

課題

  1. 練習11.1–5.
  2. 練習12.1–5.

第8回(2019/06/07)

授業内容

  1. 練習8.
  2. 第9–10課.

課題

  1. 練習9.1–5.
  2. 練習10.1–5.

第7回(2019/05/31)

授業内容

  1. 「yod現在」.
  2. 練習6.1–6.
  3. 練習7.1–6.
  4. 第8課.

配布物

  1. 「yod現在」.

課題

  1. 練習8.

第6回(2019/05/24)

授業内容

  1. 練習5.3, 6, 9.
  2. 第6–7課.

課題

  1. 練習6.1–6.
  2. 練習7.1–6.

第5回(2019/05/10)

授業内容

  1. 練習4.
  2. 練習5.1, 2, 4, 5, 7, 8, 10.
  3. 第5課(未来形の部分のみ).

課題

  1. 練習5.3, 6, 9.

第4回(2019/04/30)

授業内容

  1. 第4課.
  2. 第5課§§27–28, §32(それぞれ未来形の部分を除く).

課題

  1. 練習4.
  2. 練習5.1, 2, 4, 5, 7, 8, 10.

第3回(2019/04/26)

授業内容

  1. 第3課§§18–21.

配布物

  1. 「練習問題の予習方法の例」.
  2. 「エウリーピデース『メーデイア』第72b–73a行予習例」.
  3. 「格の用法」.

課題

  1. 練習3.

第2回(2019/04/19)

授業内容

  1. 第3課§§14–17.

配布物

  1. 「練習2.B(2019年4月26日提出)」.

課題

  1. 練習2.B.

第1回(2019/04/05)

授業内容

  1. 第1–2課.

配布物

  1. 「古典ギリシア語」.
  2. 「アクセント」.
  3. 「練習2.A(2019年4月19日提出)」.

課題

  1. 練習1.
  2. 練習2.A.

シラバス内容

講義題目

古典ギリシア語初級(前半)

授業の目標・概要

1, 目標

初級文法を1年かけて学び,古典ギリシア語で書かれた簡単な文章を読めるようにし,難しい文章であっても文法書と辞書を使えば何とか読めるようにする.

一般に古典ギリシア語を学ぶにはかなりの負担を覚悟しなければならないと思われている.したがって,そのために学修をためらったり,途中であきらめてしまう場合も少なくないと思われる.できるだけそのようにならないよう,履修者の理解度や自宅学習の時間を適宜確認しつつ,学修内容・進度と自宅学習の時間を調整するので,ためらわずに履修してほしい.

2, 古典ギリシア語

ギリシア語の重要性については改めて説明するまでもないだろう.古代ギリシア文明は西洋文化の原点であり,西洋文化の根底にあるものを知ろうとすれば,必然的に古代ギリシア文明に触れることになる.古代ギリシア語を学ぶのは容易とは言えないが,これを学ぶと,古代ギリシア語が擁する哲学・歴史学・文学・科学などあらゆる分野の膨大な文献に直接触れることができ,それらがどのように西洋文明やその他の文明に影響を与えているのかを知ることができるようになる.

ギリシア語の文献は紀元前15世紀頃の線文字B粘土板にさかのぼる.使用地域はやがて東地中海地域から地中海地域全体へ,一時はさらにインド方面にまで広がった.古典ギリシア語とは,紀元前5–4世紀にアテーナイを中心とする地域で使われていたギリシア語のことを言う.これを学べば,ホメーロス(紀元前8世紀頃)から中世ギリシア語に至るまでの各時代・地域のギリシア語や新約聖書のギリシア語も容易に習得できる.文献の豊富さゆえにラテン語,サンスクリット語などとともに印欧比較言語学に豊富な資料を提供するという点でもギリシア語は重要である.

授業のキーワード

ギリシア,ギリシャ,ラテン語,サンスクリット語,印欧語,古代

授業計画

教科書は全36課から成っているので,Sセメスターはその半分くらいまで進めることを目標とする.初回はギリシア語に関する簡単な解説を行ったあと,第1課(文字と発音)と第2課(アクセント)を扱う.

授業の方法

授業はすべて日本語で行う.予習は必須ではない.授業では教科書の内容を解説する.毎回課題が課されるので,それにもとづき復習を行ってもらう.課題の1つは暗記である.簡単な内容を覚え,次回の授業の最初に小テストを行って覚えられたかどうかを確認する.簡単な内容とは,教科書に挙げられている名詞・動詞などの変化表のことである.暗記に要する時間は1時間以内と想定している.また教科書各課末に練習問題が付されているので,授業で扱った課の練習問題を解いてきてもらう.練習問題に要する時間は3時間以内と想定している.したがって毎回の自宅学習の時間は4時間程度を想定している.解いてきた練習問題は,次の授業の際に出席者が順番に発表する.授業の段取りはしたがって次のとおりである.

  1. 小テスト(第2–12回)
  2. 練習問題
  3. 教科書の解説
  4. 課題の説明(必要に応じて)

成績評価方法

学期末試験(60点)と小テスト(20点),練習問題の発表状況(20点)で行う.

練習問題を解く際は,単語の形態(名詞なら性・数・格,動詞なら法・時称・相・数・人称など)をきちんと調べておき,また構文や語法については教科書のどの節に説明があるかを調べておくと上達が早い.すなわちそのようにすれば,教科書の練習問題や学期末試験の問題をよく理解して解くことができ,ギリシア語の原典も正確に理解することができるようになる.単に上手(に見えるよう)な和訳ができただけでは評価を得ることができないことに注意せよ.逆に和訳がぎこちなかったとしても,形態や構文等について教科書の内容をきちんと理解した上でのものであれば評価は高くなる.

教科書

水谷智洋『古典ギリシア語初歩』(岩波書店,1990).3,500円+税.ISBN: 978-4-00-000829-7

参考書

参考書は使用しない.

履修上の注意

この授業を履修するための予備知識は特に必要ない.文系/理系の別や興味のある時代・地域・分野を問わず履修生を歓迎する.

なお,前半を受けただけでは文章を読めるようにはならないので,読めるようにするにはAセメスターに開講される「古典ギリシア語初級(後半)」(科目名:「古典語初級(ギリシア語)II」)も履修すること.なお「古典ギリシア語初級(後半)」は教養学部後期課程の科目「共通ギリシア語(12)」との合同授業である.進学が内定した2年生(など)は「共通ギリシア語(12)」として履修することができる.

Aセメスターには「古典ギリシア語初級(前半)」に当たる授業は開講されていないので,計画的に履修すること.

その他

毎回課題があって大変なように見えるが,これは学期末にまとめて勉強する代わりに毎日少しずつ勉強した方がよく身につき,効率的であるからである.出された課題に取り組むことによってその習慣を身につけてほしい.

教科書の記述は難しめであるが,適宜解説するので心配する必要はない.練習問題も多く感じるかもしれないが,すべてを課題として出すわけではなく,標準的な自宅学習の時間内に収まるように調整する.

この授業以上のことを学びたければ,中級やその他原典講読の授業を受講するとよいが,まずは古典ギリシア語初級をしっかり学んでおくことが重要である.また,ギリシア語の文章が何とか読めるようになっても,その文学的・歴史的・哲学的・文化的・あるいはその他の背景を知っておかなければその意味がわからないということがよくある.そのようなものを扱う授業も,もし受講できるようであれば受講しておくとよい.

「関連ホームページ」には過年度の授業実施状況が簡単に記されているので,雰囲気を事前に調べるためには一度見てみるとよい.

関連ホームページ

http://lecture.ecc.u-tokyo.ac.jp/~cmatuura/

研究室電話番号

授業日の「4限」の前に相談を受け付ける.事前にメールで連絡してほしい.


Last modified: 2019/10/06

cmatuura<AT>mail.ecc.u-tokyo.ac.jp

© 2019 MATSUURA Takashi