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released on 25 May 2008, by H.FURUIDO
revised on 8 Jan 2009

森林政策学演習(ver2008):北海道カラマツの歴史と現状

  1. 参考文献など
    • 訂正:ロシアの輸出関税は、2008年4月現在で25%、2009年1月に80%になると言われていました(出所:4月30日付『林材新聞』)が、「ロシア政府は、針葉樹丸太の関税引き上げ措置(25%→80%、『林政ニュース』第354号参照)を1年延期することを昨年末に発表した。林野庁木材貿易対策室が確認し、1月6日付けで発表」(出所:2009年1月8日付『J-FIC WEB NEWS』)。
    • 略年表
    • 歴史:おおまかには小関隆祺道森連50年史。下記は主要な文献および検索しにくい文献の抜粋。カラマツの用途開発はカラマツ造林による所有者の収益(地代)に影響し、農業生産との競合・労働力配分の最適化のなかで、農民の土地利用を左右してきた。「北海道林業史」輪読で永田先生からコメントのあった「耕境」「伐境」概念に留意すること。
      1. 安藤時雄(1919)「信州落葉松と北海道造林事業の将来について」『北方林業(または前身の北海道林業研究会会報)』17(2)、pp.**-** 2008.7.9追加 *信州カラマツ人工造林の開始は1880年頃で、植えすぎの懸念もあったが、資本主義経済の急速な発展とともに間伐材需要がたかまり、信州林業はその唯一の供給地として栄える。北海道では国有林の一部に細々と植えられているにすぎないが、治水、港湾施設、炭鉱坑木、防風林、鉄道防雪林など、将来性は高い、と説く。
      2. 安藤時雄(1921)「カラマツの造林」『北方林業(または前身の北海道林業研究会会報)』19(5)、pp.**-** 2008.7.9追加 *カラマツはあくまで間伐材(中小径材)供給の手段とみていた。したがって、a.民有林では、強度の間伐を行って広葉樹との混交林に導く、b.国有林では、若齢級で全部伐ってその後はエゾ・トドの純林に導く、というビジョンを説いた。北海道カラマツ造林論は、この後、諏訪卯三郎(1923)(1924)、中島広吉(1930)(いずれも『同誌』)によって実証的に展開される。
      3. 小野寺 卯(1941)「中部北海道に於けるカラマツ造林の成果について」『日本林学会大会講演集』(春季)、pp.**-** 2008.7.9追加 *欧州カラマツ、朝鮮カラマツ、千島カラマツ、信州カラマツを比較。欧州カラマツの適性を懐疑、信州カラマツに好意的。1940年代初頭は、『日本林学会大会講演集』で北海道カラマツ造林論が散見される時期。
      4. 佐藤庄助(1951)「北海道に於けるトヾマツ, カラマツ植林事業経営の基本線について(林業の部)(第60回日本林學會大會並に第5回九州支部大會)」『日本林學會誌』33(12), pp.437-438 *CiNii PDFでダウンロード可
      5. 加納博(1970)「北海道におけるカラマツ造林の最近の諸問題」『山林』1030、pp.34-39
      6. 菅原聡(1971)『カラマツ材の需給構造』日本林業調査会、217pp. *信州カラマツの記述が中心だが、もともと北海道のカラマツは信州から開拓民が苗木を持ってきたもの。以来、苗木供給は長い間信州の業者に依存することになる。「カラマツ材の需要拡大の可能性の検討」(pp.70-81)は、40年近く前にどのような需要拡大が考えられていたかを示しており、北海道カラマツとも共通する内容であるといえる。これと下記の北海道立林産試験場(2005)を併せて読むと、技術開発の歴史が読み取れる。
      7. 生井郁郎(1978)「北海道のカラマツ林業確立のために−民有林業の現段階的課題と二,三の提言−」『森林組合』91、pp.12-21
      8. 王子製紙株式会社林木育種研究所(1978)「北海道社有林のカラマツ林と今後の取扱いについて」『王林』19、pp.22-48
      9. 生井ほか(1979)「北海道におけるカラマツ林業地形成の諸問題 (1979年北日本林業経済研究会-現段階における人工林施業の諸問題-カラマツ林業と農民造林<特集>」)『林業経済』32(9)
      10. 三林賢蔵(1981)「未知の木“カラマツ”に挑戦―北海道・留辺蘂のカラマツセンタ−(シリーズ地場産業研究)」『月刊中小企業』1981年4月号
      11. 北尾邦伸(1983)「カラマツ育成林業の現段階−北海道演習林をめぐる地域性の研究−」『京都大学農学部演習林報告』55、pp.107-122
      12. 千廣俊幸(1984)「北海道のカラマツ資源の現状と課題―21世紀の木材資源の利用改善を求めて−」『経済の動き(北海道銀行)』1984年7月号
      13. 北尾邦伸(1984)「限界地育成林業の形成過程--北海道カラマツ林業史 (北海道林業の構造と展開基軸<特集>)」『林業経済』38(8)、pp.15〜24
      14. 北尾邦伸(1986)「北海道カラマツ林業の経済構造--『限界地』育成林業の現状分析」『京都大学農学部演習林報告』通号 58、pp.154〜164
      15. 土屋俊幸・柳幸広登(1986)「道東民有林における農地造成の現状とその特質-美幌町の事例 (1986年度北日本林業経済研究会報告<特集>)」『林業経済』39(12)、pp.5〜10
      16. 福永義照(1988)「戦後造林政策の展開−造林政策をとりまく諸問題の検討−」、『北海道経済調査』8、pp.129-143
      17. 北海道森林組合連合会(1992)『道森連五十年史』663pp. *北海道のカラマツ造林は私有林が中心であり、その私有林での造林に森林組合は大きな役割を果たしてきた。よって本書はカラマツ問題についての最重要文献の一。アイヌの土地をすべて「官有」とした北海道で、私有林がなぜどのように形成されたかについても、道森連設立以前に遡って丹念に叙述している。編集顧問の小関隆祺氏は、本書の上梓を目前にして逝去。
      18. 木村三夫(2004)『旭川家具産業の歴史』旭川振興公社(旭川叢書29)、287pp. *「上川盆地周辺山地は、かつては無限を思わせる膨大な森林資源の供給によって、木材王国、高級家具の日本的名産地旭川を誕生させた」(p.3)。大雪山系のナラ材は世界的にみて一級品だったという。ドヴェーズが、19世紀には欧州のナラ材が枯渇したことを書いているから、北海道は、世界的に見て、最後のナラ大径材供給地であったとも言えよう。広葉樹中心の高級家具づくりは外材の利用によって継承され、旭川家具は今も全国的にその名を馳せている。実習最終日にお邪魔した会社が、カラマツ家具に取り組む際に「人がやっていないことをやる」のだといっておられるのには、こうした背景があろう。2008.8.24追加

    • 現状
      1. 和孝雄・小鹿勝利・尾張敏章(1998)「北海道におけるカラマツ林業の動向−統計資料の解析−」『北海道大学農学部演習林研究報告』55(1)、pp.97-112 *尾張先生には現地でお世話になる。
      2. 山本美穂(2002)「北海道十勝地方−捉えにくい再造林問題−」堺編『森林資源の社会化』九州大学出版会所収、pp.111-122 *北海道のカラマツ林業と九州のスギ林業のコスト比較。再造林は採算上可能か。
      3. 西川 栄明【著】・本田 匡【写真】(2003)『北の木と語る』北海道新聞社、127pp.〜とくに「カラマツ―ねじれや狂いが多いといわれるけれど、実は強くて木目が美しい可能性をいっぱい秘めた材」の項。林政307の実習関係棚にある。
      4. 北海道立林産試験場(2005)『カラマツ活用ハンドブック』75pp. *従来「小径木以外は使いにくい」と言われてきたカラマツの需要開拓のために総力を挙げて研究してきた道立林産試の研究成果。下見で伺った話では、目下、乾燥技術の開発に最重点を置いているという。
      5. 駒木貴彰(2005)「北海道のカラマツ林業の収益性と今後の見通し」『山林』1455, pp.31〜36
      6. 澤田卓也・山本美穂(2007)「北海道カラマツ人工林と耕地をめぐる土地利用の変遷―美幌町の事例より―」『日林講演要旨集』P1a03(森林学会サイトよりダウンロード可能) *本州のスギ・ヒノキ問題と異なるのは、北海道カラマツの場合、平地での造林が多かったこともあり、農地・林地間の転用が頻繁に起こったこと。この点は「歴史」の北尾論文、土屋・柳幸論文が本格的に論じている。
      7. 駒木貴彰(2007a)「森林所有権移転の実態−北海道−」、森林総合研究所編『森林・林業・木材産業の将来予測』日本林業調査会所収、pp.227-238 *カラマツ林を中心に、林家の所有権放棄や伐採放棄の実態をまとめたもの。
      8. 駒木貴彰(2007b)「北海道のカラマツ人工林は『儲かる林業』の先頭に立てるか」『日本森林学会関東森林研究』58、pp.35〜38
      9. K.H.(2007)「脱サラして親父の山を引き継ぐ」『山つくり 平成18年度/上川地域版』p.7 *K.H.氏(念のためここではイニシャル扱い)は、富良野市でカラマツ林を経営されている指導林家の方。現地でお話を伺えるかもしれません。
      10. 岩波悠紀(2007)「林野サイドからみた牧野に関する研究・行政対応100年の要諦(22)林業指導事務所が主導する北海道釧路地方のカラマツ混牧林」『畜産の研究』61(10)、pp.1099〜1106 *林業と放牧の関係をライフワークとされた岩波氏のカラマツ論

    • その他北海道林業関係→こちら

  2. 外部リンク

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