1. Visual Studio Community を使う
Visual Studio は Microsoft が提供する統合開発です. いくつかのエディションがあります. 個人が無料で使用できる Visual Studio Community がよいでしょう。
以下に示すインストールの様子は,2020年10月9日に, Visual Studio Community 2019 を Windows 10 Pro (バージョン 2004)にインストールしたときのものです.
1.1 インストール
Visual Studio Community のインストーラをダウンロードします. Visual Studio のダウンロードページ にアクセスします.もしページの URL が変わってしまっていても, 検索すれば簡単に見つかるでしょう. Visual Studio のページにもリンクがあります.
Visual Studio へのサインインで Microsoft アカウントを使用します. アカウントを持っていない場合はあらかじめ作成しておきましょう.
Visual Studio Community のインストーラへのリンク(下図の「無償ダウンロード」)をクリックします.
ダウンロードされたインストーラをダブルクリックします。
ユーザーアカウント制御のメッセージが現れたら [はい] を押します.
下図の [続行] ボタンを押します.
インストール作業が始まります.
しばらくすると,インストールの設定を行うウィンドウが現れます. 「ワークロード」では Visual Studio で何を開発するのかを選択します. 「C++ によるデスクトップ開発」は必ず選択してください. あとは任意です. 下図では,「ユニバーサル Windows プラットフォーム開発」と, 「.NET デスクトップ開発」も選択しています.
「個別のコンポーネント」「言語パック」「インストールの場所」は, 何も設定しなくてかまいません. ウィンドウ右下の [インストール] ボタンを押してください.
Visual Studio Community のインストールが始まります. 20分以上かかると思います(通信環境と PC のスペックによります).しばらく待ちます.
PC の再起動を求めらます.[再起動] ボタンを押します.
PC が再起動したら,インターネットに接続し,スタートメニューから Visual Studio 2019 を選んで起動してください.
Visual Studio へのサインイン画面が現れます. [サインイン] ボタンを押します.
Microsoft アカウントを使用してサインインします.
もしこのような画面があらわれたら [OK] を押してください。
環境設定のウィンドウが開きます. 設定したいことが特になければ, [Visual Studio の開始] ボタンを押せばよいでしょう.
右下の「コードなしで続行」をクリックします。
Visual Studio が起動します.
1.2 プログラムの作成と実行
Visual Studio で何かプログラムを書くには, 最初に「プロジェクト」を作成します. Visual Studio の「ファイル」メニューから, 「新規作成」「プロジェクト」を選択してください.
「新しいプロジェクトの作成」というウィンドウが現れます. 下図のように,「C++」の「空のプロジェクト」を選択してください. [次へ] ボタンを押します.
「新しいプロジェクトを構成します」というウィンドウが現れます. 「プロジェクト名」を入力します. プロジェクトの名前は任意ですが, テキストの問題番号とあわせた名前にするとよいでしょう. たとえば,list 1-3 に取り組むのならば, list0103 とします. プロジェクトの保存場所は変更しなくてよいでしょう. 「ソリューションとプロジェクトを同じディレクトリに配置する」にチェックを入れます. ここのチェックをはずすと, ソリューションのディレクトリ(フォルダ)が作成され, その下にプロジェクトのディレクトリが作成されます. チェックを入れると単一のディレクトリとなります. 最後に [作成] ボタンを押してください.
プロジェクトが作成され, 「ソリューション エクスプローラー」にプロジェクト名が表示されます. ソリューション エクスプローラーには, プロジェクトに含まれるファイルの一覧が表示されます.
ソースファイルを作成します. 「ソリューション エクスプローラー」で, 「ソースファイル」を右クリックします. 「追加」「新しい項目」を選択します.
「新しい項目の追加」ダイアログが現れます. 「Visual C++」の「C++ ファイル(.cpp)」を選択します. ファイル名は任意ですが,プロジェクト名と合わせておくとよいでしょう. 拡張子はデフォルトで .cpp となっているので, .c に変更します. 最後に [追加] ボタンを押します.
ソースファイルを編集するエディタが開かれます. ここでプログラムを書きます.
テキストの list 1-3 をエディタで書くと, 以下のようになります.
プログラムが書けたら保存します. 「ファイル」メニューから「list0103.c の保存」をクリックします.
ソースファイルをコンパイルします. 「ビルド」メニューから「ソリューションのビルド」をクリックしてください.
「出力」というウィンドウにメッセージが表示されます.
========== ビルド: 1 正常終了、0 失敗、0 更新不要、0 スキップ ==========
と表示されれば成功です. 表示されたメッセージ(下図)をよく見ると, list0103.exe というファイルができたことがわかります. これが実行プログラムです.
プログラムを実行します. 「デバッグ」メニューから「デバッグなしで開始」をクリックします.
コマンド・プロンプトが現れ,実行結果が表示されます. 下図では「15と32の和は47です.」と表示されています. その後のメッセージに従って何かキーを押すと, コマンド・プロンプトのウィンドウが閉じられます.
次のプログラムに取り掛かるには,現在のプロジェクトを閉じます. 「ファイル」メニューから「ソリューションを閉じる」をクリックします.
再びプロジェクトを開いて作業を行うには, 「ファイル」メニューから「開く」「プロジェクト/ソリューション」をクリックします.
プロジェクトのフォルダ(下図では list0103)の中にある, 拡張子が sln のファイル(下図では list0103.sln)を選択し, [開く] ボタンを押します.
以上で,テキストにある例題と演習問題を実行するための, 最小限の操作は説明しました. Visual Studio は高機能な統合開発環境ですので, もっといろいろなことができます. Visual Studio を扱った書籍やウェブサイトはたくさんありますので, それらをあたってみてください. たとえば,Visual Studio Community 2017 を使用したウェブ講座 簡単! Visual Studio 2017入門 が参考になります.
1.3 開発者コマンドプロンプトを使う
テキストの例題や演習問題に取り組むだけでしたら, Visual Studio はオーバースペックです. 大学の演習室での Emacs と Clang を使ったプログラミングのように, もっとシンプルな環境で学習を行いたいかもしれません.
そのように考えるなら,Visual Studio Community のインストールに含まれる, 「開発者コマンドプロンプト」を利用するとよいでしょう. テキストエディタでソースファイルを作成し, 開発者コマンドプロンプトでコンパイルと実行を行います.
使用するテキストエディタは, Windows に付属するメモ帳など何でもかまいませんが, できればプログラミング支援機能があるエディタを選ぶとよいでしょう. たとえば, サクラエディタ は人気のあるエディタのひとつです.無償です. 他には,有償ですが, 秀丸 も素晴らしいエディタです.
テキストエディタと開発者コマンドプロンプトを使って学習を行うなら, 大学の演習室での実習と同様に, 授業用のフォルダを作成しておきましょう. ここにプログラムを保存します. Windows のフォルダの階層で,あまり深くないところに作成しておくとよいでしょう, 下図では,Cドライブ > ユーザー > Atsushi の下に, densan2 というフォルダを作成しています.
エディタでプログラムを書きます. 下図では,秀丸エディタを用いて,テキストの List 1-3 のプログラムを書いています. プログラムを書いたら授業用のフォルダに名前を付けて保存します. 文字コードは Shift-JIS(メモ帳では ANSI)で保存してください. 拡張子は .c にします. 下図のプログラムは list0103.c という名前で保存しました.
スタートニューで「Visual Studio 2019」というフォルダをクリックすると, 「Developer Command Prompt for VS 2019」という名前のプログラムが見つかります. これをクリックします.
開発者コマンドプロンプトで,cd
コマンドを使って,
ソースファイルのあるフォルダに移動します.
フォルダの階層と場所を明確に意識できているのなら,
cd C:\Users\Atsushi\desnan2
のように,cd
の後に半角スペースを空け,
続いて移動先のフォルダを指定します.
階層構造に従って,フォルダ名を \
でつなぎます.
ここで \
は,Windows では円マークで表示されます.
ソースファイルを置いたフォルダの階層と場所を明確に意識できていなければ, 下図のように,何段階かに分けて階層を降りて行ってください.
上図では,最初に
cd C:\Users
として Cドライブ直下の Users フォルダに移動しています.
Windows のエクスプローラーでは「ユーザー」と表示される場所です.
ここで dir
コマンドを使って,
Users ディレクトリの下にあるフォルダとファイルを表示しています.
Atsushi というフォルダがあるのがわかったので,
cd Atsushi\densan2
として,目的の densan2 フォルダに移動しています.
ソースファイルのあるフォルダ(ここでは densan2)に移動したら,
dir
コマンドでフォルダの内容を表示してみましょう.
下図では,list0103.c というファイルがあることがわかります.
ソースファイルをコンパイルするには cl
コマンドを使います.
ソースファイルの名前が list0103.c ならば,
cl list0103.c
とします.
ソースファイルを保存したフォルダの内容を再び
dir
コマンドで表示させると,
拡張子が .exe のファイル(下図では list0103.exe)ができていることがわかります.
これが実行プログラムです.
プログラムを実行するには,拡張子(.exe)をつけずに, 実行プログラムのファイル名をコマンドプロンプトで入力します. たとえば,list0103.exe を実行するなら,
list0103
と入力して [Enter] キーを押します. 下図のように実行結果が表示されます.
開発者コマンドプロンプトを終了するには,
exit
と入力して [Enter] キーを押します.
2. Clang を使う
Clang は電算機応用 (2) の授業で使用しているコンパイラです. C言語のソースファイルをコンパイルするには, コンパイラだけでなく,リンカやライブラリといったものが必要です. これらを先にインストールしてから, Clang をインストールします. 具体的には, MinGW という開発環境を先に構築し, そこからリンカやライブラリを借りることにします.
2.1 MinGW のインストール
MinGW のサイトにアクセスして, サイト内にあるインストーラーへのリンクをクリックします. MinGW のダウンロードサイト に直接アクセスしてもいいでしょう.
下図の [実行] ボタンを押して,インストーラのダウンロードと実行を行います.
[Install] ボタンを押します.
MinGW はデフォルトで C:\MinGW にインストールされます. 変更の必要はないので,このまま [Continue] ボタンを押します.
下図の画面になったら [Continue] ボタンを押します.
MinGW Installation Manager が起動します. インストールするパッケージを選択します. ここでは,
- mingw-developer-toolkit
- mingw32-base
- mingw32-gcc-g++
- msys-base
の4つを選択してください.
「installation」メニューの「Apply Changes」をクリックします.
Schedule of Pending Actions というウィンドウが現れます. [Apply] ボタンを押します.
パッケージのダウンロードとインストールが始まります.
All changes were applied successfully; you may now close this dialogue. というメッセージが表示されたら [Close] ボタンを押します.
MinGW Installation Manager を閉じます. これで MinGW のインストールは完了です.
2.2 Clang のインストール
MinGW をインストールしたら,続いて Clang をインストールします. Clang のサイトにアクセスして, サイト内にあるダウンロードページへのリンクをクリックします. ダウンロードページ (LLVM Download Page)に直接アクセスしてもいいでしょう.
ダウンロードページで,Clang for Windows (32-bit) (.sig) あるいは Clang for Windows (64-bit) (.sig) のリンクをクリックします. どちらを選ぶかはご自分の Windows にあわせてください. コントロールパネル > システムとセキュリティ > システム で確認できます([Windows] キーを押しながら [Break] キーを押すと表示されます).
下図の [実行] ボタンを押して,インストーラのダウンロードと実行を行います.
ユーザーアカウント制御のメッセージが現れたら [はい] を押します.
しばらくするとセットアップウィザードが起動します. [次へ] ボタンを押します.
ライセンス契約書が提示されます. [同意する] ボタンを押します.
パスの設定についてたずねられます. ここは注意が必要です. Add LLVM to the system PATH for all users にチェックを入れなおしてから, [次へ] ボタンを押してください. コマンドプロンプトから Clang を使うために, ここでのパスの設定が必要となります.
Clang のインストール先をたずねられます. ここも注意が必要です. インストール先フォルダを C:\MinGW に変更してください. これにより, Clang と MinGW を組み合わせて利用できるようになります.
[インストール] ボタンを押します.
「LLVM セットアップ ウィザードは完了しました。」というメッセージが表示されたら, [完了] ボタンを押します.これでインストールは完了です.
Clang のインストールが終了する直前に, マンドプロンプトが起動して, 下図のようなエラーメッセージが表示されることがあります. メッセージに従って,何かキーを押して閉じてください. このメッセージが表示されても, Clang のインストールは成功しています.
Clang がインストールされ, 使用可能になっているかどうかを確認しておきます. コマンドプロンプトを起動します. スタートメニューでは,「Windows システム ツール」の下にあります.
コマンドプロンプトで,
clang -v
と入力して [Enter] キーを押してください. 下図のようにバージョン情報が表示されれば, Clang は使用可能になっています.
2.3 プログラムの作成と実行
大学の演習室では Mac のターミナルで Clang を使用しています. 同様に,Windows ではコマンドプロンプトで Clang を使用します. テキストエディタでソースファイルを作成し, コマンドプロンプトでコンパイルと実行を行います.
使用するテキストエディタは, Windows に付属するメモ帳など何でもかまいませんが, できればプログラミング支援機能があるエディタを選ぶとよいでしょう. たとえば, サクラエディタ は人気のあるエディタのひとつです.無償です. 他には,有償ですが, 秀丸 も素晴らしいエディタです.
大学の演習室での実習と同様に, 授業用のフォルダを作成しておきましょう. ここにプログラムを保存します. Windows のフォルダの階層で,あまり深くないところに作成しておくとよいでしょう, 下図では,Cドライブ > ユーザー > Atsushi の下に, densan2 というフォルダを作成しています.
エディタでプログラムを書きます. 下図では,秀丸エディタを用いて,テキストの List 1-3 のプログラムを書いています. プログラムを書いたら授業用のフォルダに名前を付けて保存します. 文字コードは Shift-JIS(メモ帳では ANSI)で保存してください. 拡張子は .c にします. 下図のプログラムは list0103.c という名前で保存しました.
コマンドプロンプトを起動します. スタートメニューでは,「Windows システム ツール」の下にあります.
タスクバーの検索ボックスに cmd と入力して [Enter] キーを押すという方法でも, コマンドプロンプトを起動できます.
コマンドプロンプトで,cd
コマンドを使って,
ソースファイルのあるフォルダに移動します.
たとえば,Cドライブ > ユーザー > Atsushi の下に,
densan2 というフォルダを作成してあり,
ここにソースファイルが保存されているならば,
cd C:\Users\Atsushi\desnan2
とします.cd
の後に半角スペースを空け,
続いて移動先のフォルダを指定します.
階層構造に従って,フォルダ名を \
でつなぎます.
ここで \
は,Windows では円マークで表示されます.
下図では,コマンドプロンプトが起動されたときのディレクトリがすでに
C:\Users\Atsushi
なので,単に
cd densan2
としています.
ソースファイルのあるフォルダ(ここでは densan2)に移動したら,
dir
コマンドでフォルダの内容を表示してみましょう.
下図では,list0103.c というファイルがあることがわかります.
ソースファイルのコンパイル方法は大学の演習室で行っている方法とほとんど同じです. 実行ファイルの名前の拡張子を .exe とするところだけが異なります. ソースファイルの名前が list0103.c ならば,
clang -o list0101.exe list0103.c
とします.
日本語を含んだソースファイルでは,上図のように警告が出ます.
しかし,実行ファイルはできています.
ソースファイルを保存したフォルダの内容を再び
dir
コマンドで表示させると,
拡張子が .exe のファイル(下図では list0103.exe)ができていることがわかります.
これが実行プログラムです.
プログラムを実行するには,拡張子(.exe)をつけずに, 実行プログラムのファイル名をコマンドプロンプトで入力します. たとえば,list0103.exe を実行するなら,
list0103
と入力して [Enter] キーを押します. 下図のように実行結果が表示されます.
コマンドプロンプトを終了するには,
exit
と入力して [Enter] キーを押します.