[2022S教養学部前期/後期課程]古典ギリシア語初級(前半)

松浦高志の授業用ページ

目次

連絡事項

  1. 夏休みに,初級文法を終えたばかりの人を主な対象とした中級講読会を行っていますので,興味のある方はhttps://museion.sakura.ne.jp/wiki/をご覧ください.

正誤表

更新情報

  1. 動詞(1)[2022年6月17日]の「p. 4,下から3行目:思案」の項目を2022年6月25日に追加した.
  2. 名詞(2)[2022年5月27日]の「p. 7, γραῦςの単数主格」の項目を2022年6月18日に追加した.
  3. 名詞(2)[2022年5月27日]の「p. 7, γραῦςの複数対格」の項目を2022年8月1日に追加した.

練習問題(6)[2022年6月24日]

箇所
p. 2,左欄,εἴθεの項目テキストで扱ったテキストで扱ったεἰ γάρと同様に願望の意味を強める

動詞(1)[2022年6月17日]

箇所
p. 4,下から3行目思慮思案
ποιῶμεν.ποιῶμεν;

名詞(5)[2022年6月10日]

箇所
p. 2,表1(新しい表に差し替え)ITC-LMSで配布(「文字論・音韻論・名詞正誤表」[2022年6月24日]).

練習問題(4)[2022年6月10日]

箇所
タイトル練習問題(3)練習問題(4)

文字論・音韻論(4)[2022年6月10日]

箇所
p. 2, l. 4第3変化第3曲用

名詞(3)[2022年5月30日]

箇所
p. 10,表1所有代名詞所有形容詞

名詞(2)[2022年5月27日]

箇所
p. 1, (3)(この項目の最後)「複数与格語尾の -σι(ν)に含まれるνは着脱式ν(「文字論・音韻論(3)」第2.5節)」を加える.
p. 1, (5)(この項目の最後)「単数呼格形は単数主格形と同じになることが多い」を加える.
p. 6, Σωκράτηςの単数呼格ΣώκτρατεςΣώκρατες
p. 7, γραῦςの単数主格γραύςγραῦς
p. 7, γραῦςの複数対格γραύςγραῦς
p. 7, πειθώの単数対格πειθῶπειθώ

文字論・音韻論(3)[2022年5月20日]

箇所
p. 3,下から5行目(「のみ用いる」.の後)「(3)のττ は,古アッティカ方言などではσσである.」を加える.

名詞(1)[2022年4月22日]

箇所
p. 5,下段(: ὁστέ-ο-)(: ὀστέ-ο-)
p. 7,下段(女性単数属格)ἀγαθᾶςἀγαθῆς
p. 7,下段(女性単数与格)ἀγαθᾷἀγαθῇ

p. 5のὀστοῦν「骨」に関して,語幹を表示した部分の有気記号は誤りです.無気記号に直してください.p. 7については差し替え前のファイルの場合のみ訂正してください.

文字論・音韻論(1)[2022年4月8日]

箇所
p. 4,下から3行目( ᾿ )( ῾ )
p. 4,下から2行目( ῾ )( ᾿ )

p. 4の下から3行目と下から2行目に書かれている記号を入れ替えてください.

進捗

文字論・音韻論
第1, 2, 5, 9回,Aセメスター第1回
名詞(1):第1曲用・第2曲用名詞/形容詞
第3–4回
名詞(2):第3曲用名詞
第6–7回
名詞(3):第3曲用形容詞(+第1/2曲用形容詞補遺)・比較級/最上級
第7–8回
名詞(4):代名詞
第8回
名詞(5):副詞・数詞
第9回
動詞(1):総論・現在組織
第10–12回
動詞(2):アオリスト組織
Aセメスター第1回
動詞(3):能動態/中動態完了組織
Aセメスター第2回
動詞(4):受動態アオリスト組織・未来組織・未来完了組織・動形容詞
Aセメスター第3回
動詞(5):予備
第4回
統語論(1):文法的一致・定冠詞
第5回
統語論(2):格
第6回
統語論(3):間接話法(1)
第7回
統語論(4):時の節
第8回
統語論(5):結果節・目的節
第9回
統語論(6):条件節
第10回
統語論(7):状況説明分詞
第11回
統語論(8):間接話法(2)
第12回

Sセメスターでは動詞のはじめのあたりまで扱う予定.各項目は全1回で扱うとは限らず,複数回にわたって扱う場合がある.

授業概要

以下の記録の正確性は保証しない.

開講
令和4年度(2022年度)Sセメスター
科目名(前期課程)
古典語初級(ギリシア語)I
科目名(前期課程:英語)
Classical Greek I (Introductory)
科目名(後期課程)
共通ギリシア語(5)
科目名(後期課程:英語)
Greek (5)
開講日時
金曜5時限(16:50/17:05–18:35)
時間割コード(前期課程)
31246
時間割コード(後期課程)
08A9205
単位数
2.0
科目区分
総合科目L(言語・コミュニケーション)
教室
オンライン授業(第1–2回)/駒場キャンパス1号館106教室(第3–13回)
教科書
プリントを配布
履修人数:古典語初級(ギリシア語)I
12名
履修人数:共通ギリシア語(5)
5名
学期末試験受験人数:古典語初級(ギリシア語)I
11名
学期末試験受験人数:共通ギリシア語(5)
4名

以上のほかに聴講扱いが2名.

授業日程

教養学部の通常の授業日程に従う.

  1. 2022/04/08
  2. 2022/04/15
  3. 2022/04/22
  4. 2022/05/06
  5. 2022/05/20: 5月13日午後は5月祭準備のためなし
  6. 2022/05/27
  7. 2022/05/30: 月曜日に実施
  8. 2022/06/03
  9. 2022/06/10
  10. 2022/06/17
  11. 2022/06/24
  12. 2022/07/01
  13. 2022/07/08: 学期末試験

学期末試験解説

  1. よくできていました.
  2. よくできていました.
  3. よくできていました.現在3人称複数を «ἐισι(ν)» と書いてあるものが多かったですが,«εἰσι(ν)» が正しいです(気息記号は二重母音の二字目の上).
  4. よくできていました.aを «rhaphōidos» と書いてあるものが散見されました.φ [ph] / ψ [ps]を組にして覚えてください.
  5. a. ὕβριζον(最初の音は長音なのでῡと書いてください), b. ἤκουον, c. ἡγούμην, d. εἶχον.dは「動詞(1)」第1.2節(p. 2)の(2)のἔχωの項目を見てください.すべて合っていたのは2名のみでした.あまり練習できなかったので,アオリスト組織のところでもう一度扱う予定です.
  6. 性・数(・格)の概念が理解できているかどうか試す問題でした.練習問題や,参考として配布した2019年度の学期末試験問題で扱った問題(καλή ἐστιν)の単語と性数を変えただけの問題でしたが,正答率は60%程度でした.ἀγαθοίは男性複数主格ですので,複数の男性が主語(省略されている)とわかります.実は複数の男性の中に女性が含まれていてもἀγαθοίとなるのですが,文脈がわからないので,そこまで考慮して訳す必要はないでしょう.
  7. よくできていました.これも性・数・格の概念が理解できているかどうか試す問題でした.«παιδὸς ἀγαθός» は格が異なるので「よい子供」とは訳せません.
  8. これも性・数・格の概念が理解できているかどうか試す問題でした.τὰ κακάは中性複数なので,γυνήには係らないのがポイントです.また定冠詞を二つ使ってτὰ κακὰ τὰ πολλάのように表すことがあることも学びました.なお,τὰ κακάは「(もろもろの)不幸」という意味で用いられることが多いです.
  9. 格が理解できているかどうかと,受動態が理解できているかどうかを試す問題でした.γέροντεςは主語ですが,διδάσκονταιは受動態(中動態の可能性もある)なので,「老人たちは教えられる」という意味です.受動態の動作主(by ...)はὑπό + 属格または与格のみで表します(ὑπό + 属格だとὑπόの意味を「語彙」に載せなければならず,受動態であることがわかってしまいますので,後者を用いました).したがって「徳について子供たちによって老人たちは教えられる」が答えです.「老人」「徳」「子供」「教える」という単語が語彙集の中で見つかるので,「老人たちは子供たちに徳について教える」という文を妄想できてしまいます.そのためあえてそれとは違った文に変えてあります.
  10. 最上級のつくり方と構文を理解しているかを試す問題でした.νεωτάτηは女性単数主格ですので,「その女(母)は」が主語です.またこの属格は「…のうちで(もっとも)」(部分の属格)という意味です(「名詞(3)」p. 12).
  11. 第12回に扱ったμι動詞の問題でした.練習問題ができなかったので,簡単な問題にしておきました.μι動詞の現在2人称複数形が理解できていれば訳せる問題です.直説法でも命令法でも同じ形になりますので,どちらで訳しても正解です.
  12. 関係代名詞の用法が理解できているかどうか試す問題でした.ὅςは男性単数主格の関係代名詞ですので,まずἦγενの主語(3人称単数)です.したがって「彼らを導いていたその男」が関係節の中身です.次に(主節の中の)ὅςの先行詞を探します.男性単数の名詞は特に見当たらないので,省略されている,あるいは表されていないと考えます.ἐπαινῶは1人称単数(≠3人称単数)ですから,先行詞は主節の主語ではありません.ἐπαινῶは他動詞ですから,直接目的語が省略されていると考えるのが適切です.したがって主節は「その男を私は称賛する」という意味になり,全体として「彼らを導いていた男を私は称賛する」という意味になります.ἐπαινῶは直説法のつもりで出題しましたが,接続法でも同形ですので,接続法で訳してもよいでしょう.その場合,1人称なので提案・要請になり,単数なので英語の‘I shall’に対応する表現になります(「私は賞賛しよう」).αὐτούςは強意代名詞ですが,斜格(属格・与格・対格のこと)ですので3人称の人称代名詞の代わりです.なお,「……ことを私は賞賛する」という訳が散見されましたが,ὅςは男性単数主格ですから,英語だとwho(主語としての)に対応し,which(あるいはthat)には対応しません.whoで導かれる関係節は「……こと」と訳すことはできませんから,ギリシア語でもそのように訳せないことは容易に想定することができます.そのためこれは不正解としました.
  13. 中動態の意味がわかっているかどうかを試す問題でした.ποιοῦμαιは中動態か受動態のどちらかです.ποιοῦμαιは1人称単数ですから,τοῦτοは対格であろうとわかります.すると中動態の可能性が高くなります.次に中動態の意味を考えます.τοῦτοは直接目的語でしょうから,直接再帰的ではありません.複数形ではないので相互的でもありません.すると間接再帰的意味ということになり,「自分のために(私はそれをする)」という訳になります.使役的の説明が現時点ではあまりできていないので,使役的で訳す解答(「私はそれを人に作らせる/やってもらう」)は想定していませんでしたが,これは正解としました.なお,「自分自身でそれを行う」のような訳がありましたが,これだと再帰的(行為がび自分にってくる)な意味がなくなってしまいます.
  14. 接続法の意味がわかっているかどうかを試す問題でした.1人称なので,思案・熟慮を表す用法です.13を少し変えただけの文にしたのは,母音融合動詞に時間をかけられなかったので,片方だけ出題すると,直説法と接続法の形態上の違い(-οῦ- ←→ -ῶ-)に気づけないかもしれないとの考えからでした.そのため13が間違っていても,それに思案・熟慮の意味を加えたものになっていれば正解(減点なし)としました.
  15. 「希求法+ἄν」という,可能的希求法(potential optative)の理解を試す問題でした.「私はそれを受け取らないだろう」が答えです.可能的希求法は,可能性を表すもので,能力等を表すものではないので,「受け取れないだろう」の意味ではないのですが,授業でそこまで詳しくは扱っていないので,これでも正解(減点なし)としました.同様に「受け取ることができない」(「だろう」がない場合)の意味でもないのですが,これはわずかに減点としました.

和訳(6–15)は,ほぼ全問正解の学生と,ほぼ全問不正解の学生に二分されるような形になりました.Sセメスターの学期末試験では,ギリシア語初級で学生がつまずきがちなところ,すなわち名詞については性・数・格,動詞については人称・数・態等の概念が理解できているかをできるだけ直接的に検査する問題を作るようにしていますので,それを理解できているかどうかで二分されたのではないかと思います.たとえば英語では,単語の順番によって主語,動詞,間接目的語,直接目的語等がわかりますが,ギリシア語ではそうはいきません.これらの概念があやふやだった方はAセメスター前に復習しておくことをお勧めします.

第13回(2022/07/08)

授業内容

  1. 学期末試験(90分間).

配布物

  1. 学期末試験問題.

第12回(2022/07/01)

授業内容

  1. 小テスト(12).
  2. 「練習問題(5)」和訳第8番.
  3. 「練習問題(6)」.
  4. 「動詞(2)」.

配布物

  1. 「動詞(2)」.

第11回(2022/06/24)

授業内容

  1. 小テスト(11).
  2. 「練習問題(4)」(和訳第2番).
  3. 「練習問題(5)」(和訳第8番以外).
  4. 「動詞(1)」第1.2節,第1.4節[3],第1.5節,p. 14, ll. 1–3,第2.2節.

「練習問題(5)」和訳第8番は次回やります.

配布物

  1. 「文字論・音韻論・名詞正誤表」.
  2. 「練習問題(6)」.

課題

「練習問題(6)」に書かれている通り.

第10回(2022/06/17)

授業内容

  1. 小テスト(10).
  2. 「練習問題(4)」(和訳第2番以外).
  3. 「名詞(4)」第10.5, 10.6節.
  4. 「動詞(1)」第1.1, 1.3, 1.4節(第1.4節の[3]は次回).

「練習問題(4)」和訳第2番は次回やります.

配布物

  1. 「動詞(1)」.
  2. 「練習問題(5)」.
  3. 「学期末試験について」.
  4. 「学期末試験(2019年度Sセメスター)」見本.

課題

「練習問題(5)」に書かれている通り.

第9回(2022/06/10)

授業内容

  1. 小テスト(9).
  2. 「練習問題(3)」.
  3. 「文字論・音韻論(4)」第1.1, 2.1, 2.2節.
  4. 「名詞(5)」.

「名詞(4)」第10.5, 10.6節は次回やります.

配布物

  1. 「文字論・音韻論(4)」.
  2. 「名詞(5)」.
  3. 「練習問題(4)」(「練習問題(3)」と印刷されていますが,正しくは「練習問題(4)」です).

課題

「練習問題(4)」に書かれている通り.

第8回(2022/06/03)

授業内容

  1. 小テスト(8).
  2. 「名詞(3)」第9節から.
  3. 「名詞(4)」第10.4節まで.

配布物

  1. 「名詞(4)」.
  2. 「練習問題(3)」.

課題

「練習問題(3)」に書かれている通り.

第7回(2022/05/30)

授業内容

  1. 小テスト(7).
  2. 「練習問題(2)」.
  3. 「名詞(2)」(p. 5のπόλιςから).
  4. 「名詞(3)」第8節まで.

配布物

  1. 「名詞(3)」.

課題

以下の通り.提出すべき課題はありません.

  1. 「名詞(2)」のp. 10の問題(11–18).
  2. 「名詞(3)」のp. 12の小テスト(8)と問題(1–6).

第6回(2022/05/27)

授業内容

  1. 小テスト(6).
  2. 「練習問題(2)」.
  3. 「名詞(2)」(p. 5のἀνήρまで).

配布物

  1. 「名詞(2)」.

課題

「名詞(2)」のp. 10の「小テスト(7)」と「問題」の(1–10).問題の方は分量が多いので,座席位置で奇数番と偶数番に分けています(両方やってきてももちろん可).提出すべき課題はありません.

第5回(2022/05/20)

授業内容

  1. 小テスト(5).
  2. 「練習問題(1)」.
  3. 「文字論・音韻論(3)」(第2.4.5節以降は省略).

配布物

  1. 「文字論・音韻論(3)」.
  2. 「練習問題(2)」.

課題

課題は「練習問題(2)」に書かれています.提出すべき課題はありません.

第4回(2022/05/06)

授業内容

  1. 小テスト(4).
  2. 「名詞(1)」の練習問題B(p. 8).
  3. 「名詞(1)」第3–4節(pp. 4–7).

配布物

  1. 「練習問題(1)」.

課題

  1. 小テスト(5):「名詞(1)」の「小テストと練習問題(第5回)」の練習問題A.
  2. 「名詞(1)」の「小テストと練習問題(第5回)」の練習問題B.
  3. 「名詞(1)」の「小テストと練習問題(第5回)」の練習問題C(「練習問題(1)」).

第3回(2022/04/22)

授業内容

  1. 小テスト(3).
  2. 「文字論・音韻論(2)」の第4節「問題」.
  3. 「名詞(1)」の第1–2節(pp. 1–4).

配布物

  1. 「名詞(1)」:ITC-LMSで2022/04/22 14:50頃まで掲示していたものには間違いがあるので,「名詞(1)[修正版]」をダウンロードしてください.紙媒体での配布分では手書きで修正されていますのでそのままで構いません.

課題

  1. 小テスト(4):「名詞(1)」の「小テストと練習問題(第4回)」の練習問題A(τῑμήとθάλατταの曲用表を覚える).
  2. ITC-LMSに提出:「名詞(1)」の「小テストと練習問題(第4回)」の練習問題B.

第2回(2022/04/15)

授業内容

  1. 小テスト(2).
  2. 「文字論・音韻論(1)」の「問題」.
  3. 「文字論・音韻論(1)」第2–3節(p. 5).
  4. 「文字論・音韻論(2)」.

配布物

  1. 「文字論・音韻論(2)」.

課題

  1. 小テスト(3)[小テスト(2)と同じ内容].
  2. 「文字論・音韻論(2)」の第4節「問題」.

第1回(2022/04/08)

授業内容

  1. 「オンライン授業について」.
  2. 「古典ギリシア語」.
  3. 「文字論・音韻論(1)」第1節(pp. 1–5).

配布物

  1. 「オンライン授業について」.
  2. 「古典ギリシア語」.
  3. 「文字論・音韻論(1)」.

提出課題

次の課題を提出すること.次回の授業のはじめに答え合わせをする.なお,課題の提出は毎回ではない.指示がない場合は提出しなくてよい(「随時提出用」に提出してもよい).

  1. 「文字論・音韻論(1)」の「問題」(ITC-LMSに4月15日11:00までに提出).

課題

  1. 小テスト(2).

シラバス内容

講義題目

古典ギリシア語初級(前半)

授業の目標・概要

1, 目標

初級文法を1年かけて学び,古典ギリシア語で書かれた簡単な文章を読めるようにする.また難しい文章であっても文法書と辞書を使えば何とか読めるようにする.

2, 教科書と学修内容

昨年度まで使用していた教科書は記述や練習問題が難しめであり,学生への負担が少々大きいと思われる.負担を少しでも軽減させることを目的に,今年度は教科書は使用せず,毎回プリントを配布して授業を行うこととする.

古典ギリシア語を学ぶにはかなりの負担があると一般に思われており,そのために学修をためらったり,途中であきらめてしまう場合も少なくない.そのようにならないよう,自宅学習の時間についても,当授業の単位数に見合った毎回4時間程度に収まるようにできるだけ調整する.

3, 古典ギリシア語

ギリシア語の重要性については改めて説明するまでもないだろう.古代ギリシア文明は西洋文化の原点であり,西洋文化の根底にあるものを知ろうとすれば,必然的に古代ギリシア文明に触れることになる.古代ギリシア語を学ぶのは容易とは言えないが,これを学ぶと,古代ギリシア語が擁する哲学・歴史学・文学・科学などあらゆる分野の膨大な文献に直接触れることができ,それらがどのように西洋文明やその他の文明に影響を与えているのかを知ることができるようになる.

ギリシア語の文献は紀元前15世紀頃の線文字B粘土板にさかのぼる.使用地域はやがて東地中海地域から地中海地域全体へ,一時はさらにインド方面にまで広がった.古典ギリシア語とは,紀元前5–4世紀にアテーナイを中心とする地域で使われていたギリシア語のことを言う.これを学べば,ホメーロス(紀元前8世紀頃)から中世ギリシア語に至るまでの各時代・地域のギリシア語や新約聖書のギリシア語も容易に習得できる.文献の豊富さゆえにラテン語,サンスクリット語などとともに印欧比較言語学に豊富な資料を提供するという点でもギリシア語は重要である.

授業のキーワード

ギリシア,ギリシャ,ラテン語,サンスクリット語,印欧語,古代

授業計画

第1回は授業に関する簡単な説明を行ったあと,さっそく文字の読み取りと書き取りについて扱う.

なお,第2回の授業前と第3回の授業時に提出予定の課題(ギリシア文字の読み取りと書き取り)がある.やむを得ず履修登録前の授業に出られなかった場合は後で提出することができる(「成績評価方法」も参照).

第1–2回
文字と音韻
第3–9回
名詞と形容詞の曲用
第10–12回
動詞の活用(1)
第13回
学期末試験

動詞の活用の続きと統語論(syntax)はAセメスターで扱う.

授業の方法

A. 概要

授業はすべて日本語で行う.予習は必須ではない.授業では教科書の内容を解説する.毎回課題が課されるので,それにもとづき授業内容の復習を行ってもらう.課題の一つは暗記である.簡単な内容を覚え,次の授業時に小テストを行って覚えられたかどうかを確認する.簡単な内容とは,教科書に挙げられている名詞・動詞などの変化表のことである.暗記に要する時間は1時間以内と想定している.また,毎回練習問題が課されるので,それを解いてきてもらう.練習問題の大半は,単語の形態を調べ,和訳するというものである.練習問題に要する時間は3時間以内と想定している.したがって毎回の自宅学習の時間は4時間程度を想定している.

B. 対面/オンライン授業の切り替えと概要

  1. 標準的な授業と同様,第2回まではオンライン授業,第3回以降は対面授業の予定である(やむを得ず第3回以降の一部またはすべてがオンライン授業となった場合についてはEを参照).
  2. 90分授業とし,105分授業との差分の15分は(教室あるいは各自での)小テストの実施に充てる.
  3. 最終回は学期末試験(やむを得ずオンライン授業となった場合についてはEを参照).

C. 授業の流れ

  1. 教材のダウンロード(授業前)
  2. 小テスト(第2–12回)
  3. 練習問題
  4. 教材を使って文法事項を教員が説明・質疑応答

教材は,極力授業日前日の朝までにITC-LMSに用意するので,オンライン授業時(第2回)は授業前にダウンロードしておく.対面授業時(第3回以降)はプリントを配布する(ITC-LMSにもアップロードする予定).

小テストは90分授業の開始時刻までに各自実施する(移動等がある場合は当日中).対面授業時はプリントを配布する(ITC-LMSにもアップロードする).

練習問題は受講者が順番に発表していく.オンライン授業時(第2回)は音声のみでよい.まずギリシア語の文章を音読してもらい,そのあと和訳してもらう.必要があれば文法事項について説明を加えながら和訳してもよい.それが終わったあと,教材の内容をきちんと理解した上で和訳ができているかどうか,教員から何点か質問するので答えてもらう.

オンライン授業時(第1–2回)に教材の補足説明や練習問題の説明をする際には,教員のコンピュータの画面を映して説明する.

D. 小テスト

小テストは,重要な変化表を覚え,何も見ずにそれを書き出すというものである.

105分授業との差分の15分でこれを実施する.対面授業かつ105分授業の場合は公平性を確保した上で実施することが容易であったが,オンライン授業または90分授業の場合はそれが難しい.そこで次のように実施する.

対面授業時(第3回以降)は次のように実施する.105分授業の開始時(16:50)には教員が教室で小テストのプリントを配れる状態にしておくので,各自でそれを取り,可能な学生は90分授業の開始時(17:05)までに実施して提出する.移動等の理由で90分授業の開始時(17:05)までに実施できない学生は,適当な時(当該授業前でも後でもよい)に実施し,その回の授業時か,その次の回の授業時までに提出する.小テストのプリントはITC-LMSにもアップロードしておくので,各自で印刷したものでもよい.

オンライン授業時(第2回)は上記の内容を各自で実施してもらう.なお,オンライン授業時には,各自が自宅で小テストに取り組むための動機づけが弱くなる可能性があり,それを防ぐために,授業開始時に任意に何人かに当てて指定された変化表(の一部)を暗唱してもらうことがある.

オンライン授業時(第2回)は小テストの実施において公平性を確保することが難しく,また対面授業時(第3回以降・90分授業)も完全に公平に実施することは難しいため,それを考慮した上で採点する.

↓↓↓↓↓ 以下はやむを得ず第3回以降の一部または全部がオンライン授業となった場合のみ ↓↓↓↓↓

E. 第3回以降の一部または全部がやむを得ずオンライン授業となった場合

第3回以降は原則として対面授業で行うが,新型コロナウィルスの感染状況が悪化し,やむを得ずオンライン授業となった場合は次のようにする.

  1. 学期末試験を行わず,提出課題を課す(第13回がやむを得ずオンライン授業となった場合).
  2. 第13回も小テストを行う(第13回がやむを得ずオンライン授業となった場合).
  3. 授業の方法や小テストの実施方法は第1–2回と同様.

最終回がやむを得ずオンライン授業となった場合,学期末試験を行わず,学期中何回かにわたって提出課題を課す.その場合,書いたノートをスキャンまたは撮影(文字を入力した電子ファイルでもよい)してITC-LMSにアップロードする作業が必要である.

↑↑↑↑↑ 以上はやむを得ず第3回以降の一部または全部がオンライン授業となった場合のみ ↑↑↑↑↑

成績評価方法

1, 概要

学期末試験(60点)と小テスト(20点),練習問題の発表状況(20点)で行う.第13回がやむを得ずオンライン授業となった場合については6参照.

2, 採点基準

おおむね次のようになるように採点を行う予定である.

50点
形態をある程度理解しており,練習問題を解いてきている.
65点
形態をだいたい理解しており,練習問題を解く際にそれを用いている.
80点
形態をほぼ理解しており,構文や語法に注意して練習問題を解いてきている.
90点
形態や構文,語法をほぼ正しく理解しており,自分の言葉で正しく説明できる.

練習問題を解く際は,単語の形態(名詞なら性・数・格,動詞なら法・時称・相・数・人称など)をきちんと調べておき,また構文や語法については教材のどの項目に説明があるかを調べておくと上達が早い.すなわちそのようにすれば,練習問題をよく理解して解くことができ,ギリシア語の原典も正確に理解することができるようになる.単に上手(に見えるよう)な和訳ができただけでは評価を得ることができないことに注意せよ.逆に和訳がぎこちなかったとしても,形態や構文等について教材の内容をきちんと理解した上でのものであれば評価は高くなる.

3, 学期末試験/提出課題

学期末試験の主な内容は次のとおり.

  1. 書き取り(アルファベット・変化表・適切に語形変化させる問題等)
  2. 和訳

bの和訳について,頻出単語以外は語彙集を付すので,少なくともSセメスターの間は単語をたくさん覚えておく必要はない.その代わり,少しでも単語の形態や構文,語法といった文法事項について不明確な点が和訳に見受けられれば減点の対象になるので注意すること.

4, 小テスト

2019年度以前の105分授業の際は,(対面)授業開始時に一斉に小テストの用紙を配布して行っていたので公平性を保つのが容易であったが,現在の授業の方法では公平性を保つのが容易でない.[授業の方法]のDで述べたように,それを考慮した上で採点する.

やむを得ず履修登録前の授業に出られなかった場合,履修登録前に行った小テストは,履修登録後の適当なときに行うことができるので申し出ること.簡単な内容を覚えて書き出すだけの内容であるから,後で行った場合でも不利になることはない.

5, 履修登録前の提出課題

履修登録前に2回程度,ギリシア文字の読み取りと書き取りの課題を課す(「授業計画」も参照).やむを得ず履修登録前の授業に出られなかった場合は後で提出することができる.ギリシア文字を,対応するローマ字に変換する,あるいはその逆を行うだけの簡単な内容であるから,後で行った場合でも不利になることはない.

ギリシア文字をきちんと手書きできるかどうかということも評価の対象(キーボード等から正しく入力していてもその文字の特徴を十分に把握しているかどうかは判断できない)なので,少なくともギリシア文字の書き取りについては手書きしたものを(オンライン時はスキャンまたは撮影したものをITC-LMSに,対面授業時は手書きしたもの自体でもよい)提出する.読み取りについては手書きでも,文字を入力した電子ファイル(を印刷したもの)でもよい.

ギリシア文字の読み取りと書き取りの課題を履修登録前に課す理由は,一般にギリシア語の初等文法の教科書では,ギリシア文字を学んだ後は基本的にラテン文字転写を併記せず,ギリシア文字だけで記述されているためである.早いうちにギリシア文字に慣れておかないと,教科書を読むことすら大変になる.ギリシア文字はラテン文字(ローマ字)とそれほど違いがないため慣れるのはそれほど大変ではないが,正しく覚えることができたかどうかを自分で確認するのは非効率的であるから,履修登録前にギリシア文字の読み取りと書き取りの課題を課し,それを簡単に添削して返す.これをもとに各自が復習を行うことで,ギリシア文字に早く慣れることができる.

なお,履修登録期間より前の授業に出席してはいるが,履修登録を行うかどうか迷っているため,履修登録期間より前に提出する課題の提出を見合わせたいという学生/院生がいるということは想定していないが,もしいれば相談すること.もちろん課題の内容と目標に鑑みて,履修登録を行うかどうか迷っていても提出することを勧める.

↓↓↓↓↓ 以下はやむを得ず第13回がオンライン授業となった場合のみ ↓↓↓↓↓

6, 第13回がやむを得ずオンライン授業となった場合

第3回以降は原則として対面授業で行うが,新型コロナウィルスの感染状況が悪化し,第13回がやむを得ずオンライン授業となった場合,学期末試験は行わず,代わりに提出課題を学期中に何回か課す.

提出課題では練習問題と同程度の長さのギリシア語の文章がいくつか与えられるので,その読み(ラテン文字転写),それぞれの単語の品詞,形態,意味,構文や語法に関わることをそれぞれ調べ,全体を和訳するというものである.

提出課題の配点は学期末試験の場合と同様に60点である.

↑↑↑↑↑ 以上はやむを得ず第13回がオンライン授業となった場合のみ ↑↑↑↑↑

教科書

プリントを配布する.

参考書

授業中に指示をする.

水谷智洋『古典ギリシア語初歩』(岩波書店,1990).3,500円+税.ISBN: 978-4-00-000829-7

文法事項を先に概観しておきたい学生のために,昨年度まで使用していた教科書を挙げておく.通常は使用する必要はない.

履修上の注意

この授業を履修するための予備知識は特に必要ない.文系/理系の別や興味のある時代・地域・分野を問わず履修生を歓迎する.

なお,前半を受けただけでは文章を読めるようにはならないので,読めるようにするにはAセメスターに開講される「古典ギリシア語初級(後半)」(科目名:「古典語初級(ギリシア語)II」)も履修すること.なお「古典ギリシア語初級(後半)」は教養学部後期課程の科目「共通ギリシア語」との合同授業である.進学が内定した2年生(など)は「共通ギリシア語」として履修することもできる.

Aセメスターには「古典ギリシア語初級(前半)」に当たる授業は開講されていないので,計画的に履修すること.

その他

毎回課題があって大変なように見えるが,これは学期末にまとめて勉強する代わりに毎日少しずつ勉強した方がよく身につき,効率的であるからである.出された課題に取り組むことによってその習慣を身につけてほしい.

この授業以上のことを学びたければ,中級やその他原典講読の授業を受講するとよいが,まずは古典ギリシア語初級をしっかり学んでおくことが重要である.また,ギリシア語の文章が何とか読めるようになっても,その文学的・歴史的・哲学的・文化的・あるいはその他の背景を知っておかなければその意味がわからないということがよくある.そのようなものを扱う授業も,もし受講できるようであれば受講しておくとよい.

「関連ホームページ」には過年度の授業実施状況が簡単に記されているので,雰囲気を事前に調べるためには一度見てみるとよい.

関連ホームページ

http://lecture.ecc.u-tokyo.ac.jp/~cmatuura/

研究室電話番号

メールまたは授業日の「3限」の時間帯に相談を受け付ける(事前に連絡が必要).

オンライン授業URL

ITC-LMSで確認すること.

オンライン授業内容

ITC-LMSで確認すること.

授業実施形態

対面・オンライン併用型A

リンク


Last modified: 2022/08/15

cmatuura<AT>mail.ecc.u-tokyo.ac.jp

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