4. 画像と雑音

 機器により収集・伝送された画像には,本来必要な画像以外にノイズ(雑音)が重畳し,画像そのものや背景が汚れていることがある。ノイズは様々な要因により生じる。撮像素子(CCDなど)の場所による感度のばらつき,熱雑音(映像増幅アンプの素子雑音など),撮像機器の環境雑音(例えば,ビデオ・カメラの側にパソコンを置いた場合など),伝送線路上に乗る外来雑音(映像ケーブルに調光器付き照明装置の電線を沿わせた場合など),伝送線路途中の接触不良,電波雑音,複数伝送路の時間ずれ(テレビのゴーストなど),伝送線路における反射(エコー・鳴音)など,電気的・物理的に生じる場合や,量子化雑音(bit数不足など),折り返し歪みなど信号処理により生じる場合,など種々の要因がある。
 このようなノイズが重畳した画像からノイズを低減あるいは除去し,本来必要な画像を強調または抽出したいことが度々生じる。ノイズには,画像と相関のあるノイズと,画像とは無相関のノイズとがある。画像と相関のあるノイズはその生成過程に立ち返ってモデル化し,信号処理により低減あるいは除去する必要があるが,画像と無相関のノイズは,画像とノイズが持つ特徴の違いを利用して低減あるいは除去できる場合が多い。本項ではその特徴について述べる。(以下の説明図の処理は ImageJ を用いて行なった。

1) 画像とノイズの振幅
 元画像と,元画像に3種のノイズが重畳している場合の振幅を見てみよう。
元画像は,midsagittal.rawから Image->Rotate->Flip Horizontally で作成した。
ノイズは,正規ノイズ,白色ノイズ,Salt & Pepper ノイズである。
正規ノイズ(Gaussian Noise) は,振幅が正規分布しているノイズであり,電子素子が発生するノイズによく見られる。白色ノイズ(White Noise) は一様分布するノイズである。Salt & Pepper ノイズは,drop-out noise, speckle noise, intensity spike などと呼ばれることもあり,信号伝送不良などにより発生する。
これらのノイズは元画像と無相関なので,元画像との加算則が成り立つ。
 下図の元画像中に,x=0~255, y=100~103を Rectangular Selection で指定した黄色の枠を示してある。右側の図は,黄色枠内の,x軸方向の振幅変化を,連続したそれぞれのy座標について4枚の図として示してある。ノイズが重畳した場合も(黄色の枠は示していないが)同じ部分の振幅変化である。( AnalyzeSurface Plot... )

元画像
元画像+正規ノイズ
元画像+白色ノイズ
元画像+Salt & Pepper ノイズ

振幅変化の様子が他のノイズと違い,突発的であることに注意

2) 画像とノイズのスペクトル
下図は,左側の元画像と3種のノイズそれぞれについてFFTを計算し,左図の黄色の枠で示すように,中心の上下y座標5点の平均値を,x軸の256点についてそれぞれ計算して示したものである。x軸の中心の周波数は0で,両側に行くほど周波数の高い成分を示している。これらの図を見ると,画像とノイズとでは,スペクトル分布が違い,画像では周波数が低い成分が強く,周波数が高くなるにしたがって強度が下がっていくが,ノイズでは,周波数の変化にかかわらずスペクトルの強度が一様であることが分かる。( ProcessFFTFFTAnalyze → Plot Profile ) この性質を利用すると,ノイズが重畳している画像のノイズを低減または除去できる可能性がある。次項では低域フィルタの1種である Smoothing を用いて確かめてみよう。

元画像
正規ノイズ
白色ノイズ
Salt & Pepper ノイズ

3) ノイズが重畳した画像の Smoothing
 下3つの図の右は,ノイズが重畳した左図の画像を ImageJ の ProcessSmooth により3点 Smoothing した図である。正規ノイズと白色ノイズの場合は,ノイズが低減されて画像が見やすくなっており,低域フィルタが有効なことが分かる。しかし,Salt & Pepper ノイズの場合は,処理により逆に画像が見にくくなっている。Salt & Pepper ノイズのように振幅が突発的に変化する場合には, Smoothing などの低域フィルタ処理は有効ではない。このような場合, Median Filter という処理が用いられる。

処理前
3点 Smoothing 処理後
ノイズの種類
正規ノイズ
白色ノイズ
Salt & Pepper ノイズ

Salt & Pepper ノイズが重畳した画像を Median Filter により処理した例
 Median Filter の説明は,で行なう。