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released on 12 May 2008, by H.FURUIDO
revised on 24 Aug 2008

森林政策学演習(ver2008):アイヌの森林文化と近代林学・林分施業法輪読メモ

  1. 参考文献など
    • 略年表
    • アイヌ関係(順不同)
      1. 多原香里(2006)『先住民族アイヌ』にんげん出版、261pp. *フランス国立社会科学高等研究院に提出した修士論文を日本語に訳し、加筆したもの。著者は、先住民の権利に関する国際機関に在籍した経験をもっており、資料的価値も高い。
      2. 新谷行(1977)『増補アイヌ民族抵抗史』(三一新書)三一書房、320pp.
      3. 新谷行(1977)『アイヌ民族と天皇制国家』三一書房、398pp.
      4. 萱野茂・田中宏編集代表(1999)『アイヌ民族ト°ン叛乱 二風谷ダム裁判の記録』三省堂、548pp.+追補
      5. グループ”シサムをめざして”編(1994)『”先住民族の10年”とアイヌ民族連帯』社会思想研究会ほか、86pp.
      6. NPO法人 ナショナルトラスト チコロナイ(2002?)<活動紹介パンフレット> *ナショナルトラスト運動と先住民族との連携が興味深い
      7. アイヌ民族文化公園構想 平取町推進協議会(2001)『IWOR=イウォロの創造的再生と発展に向けた提案−沙流川流域における伝統的生活空間整備構想』、34pp. *エコミュージアム的発想を援用した興味深い動き
      8. 平取町立二風谷アイヌ文化博物館<パンフレット。林野利用にかかわる展示品の紹介多数>
      9. 北海道ウタリ協会札幌支部(2003)『アイヌ民族30周年記念誌』、93pp.
      10. アイヌ文化振興・研究推進機構『財団のあらまし』各年度版
      11. アイヌ文化振興・研究推進機構(2008)『アイヌ民族:歴史と現在−未来を共に生きるために−』46pp. *近刊。道内ではすべての中学校に配付されている。内地では教えられない歴史や基礎知識が豊富。pp.44-45の法律抜粋も重要。小学生版もあり、こちらにしか含まれていない内容もあるので注意。
      12. 萱野茂『アイヌ歳時記』→【配付済み】
      13. 二風谷フォーラム実行委員会編(1994)『アイヌモシリに集う−世界先住民族のメッセージ−』栄光教育文化研究所、和文+英文〜とくに、萱野茂「日本におけるアイヌ民族のいま<記念講演>」pp.14-35
      14. 貝澤耕一(1996)「ダム湛水は先住民族の文化の破壊だ」『世界』96年6月号、pp.169-173
      15. 中村康利編著(2001)『二風谷ダムを問う』、さっぽろ自由学校「遊」、176pp.
      16. 上村英明(1993)『知っていますか? アイヌ民族一問一答』、解放出版社、118pp. *p.83に「北海道(アイヌモシリ−アイヌ民族が住む土地)アイヌ語地名(一部)」という地図があり、富良野は「フラヌイー〔硫黄の〕臭気をもつところ」とある。
      17. 野村義一・山川力・手島武雅(1993)『日本の先住民族 アイヌ』、(人権ブックレット42)部落解放研究所、99pp.
      18. 三好文夫(1973)『アイヌの歴史−神と大地と猟人と−』、講談社、238pp.
      19. 結城庄司(1980)『アイヌ宣言』、三一書房、274pp.
      20. 富村順一(1981)『皇軍とアイヌ兵』、JCA出版、237pp. *沖縄とアイヌのつながり
      21. 貝澤美和子(2007)『平取町内に伝わる薬用植物』30pp. *二風谷在住の古老への聞き取りによる薬草利用の経験知。
      22. 帯広百年記念館編(2004)『アイヌ語で自然かんさつ図鑑』帯広百年記念館友の会、64pp. *植物編、鳥類編、動物編があり、種ごとにアイヌ文化と自然科学的説明が併記されている。帯広は晩成社が入ったところで、記念館にはアイヌの人びとの生活についての展示がある。
      23. 川村正一編(2005)『アイヌ語の動植物探集』文泉堂、268pp. *限定出版だが道立図書館北方資料室などにある筈
      24. 知里真志保(1986)『和人は舟を食う』北海道出版企画センター、214pp.
      25. 札幌学院大学人文学部編(1988)『北海道・森と木の文化』札幌学院大学生協、296pp.〜とくに萩中美枝「アイヌと木の文化」pp.91-123関秀志「開拓移民と木の文化」
      26. 関・矢島・古原・出利葉(1997)『北海道の自然と暮らし』(北の生活文庫 第2巻)北海道新聞社、242pp. *「開拓」時代の木材利用や、晩成社の十勝開拓におけるアイヌ民族との交流・経験知からの学習事例が目を惹く。近代林学が一顧だにしなかった(?)アイヌの林野利用方法を、少なくとも一部の開拓民は必要とした。とはいえ「晩成社の十勝開拓は必ずしも略奪的なものではないが、開拓の進展は確実に自然環境を変え、結果的にはアイヌ民族の生活の場を奪っていったといえる」(p.223)
      27. 十勝晩成会20年のあゆみ編集委員会(1991)『十勝晩成会20年のあゆみ』十勝晩成会、299pp. *関ほか(1997)の「晩成社」関係の資料を抄録。十勝の銘菓「マルセイのバターサンド」はその名を晩成社から取っている。2008.6追加
      28. 二風谷部落誌編纂委員会(1983)『二風谷』二風谷自治会〜「二風谷の林業」pp.241-246(貝澤正筆) 【配付済み】
      29. 渡辺茂・河野本道編(1974)『平取町史』北海道出版企画センター、835pp.〜「第3章 林業」など *歴史研究者が、アイヌ民族問題について「ともすれば和人のモラルによってこれを規制しようとする錯誤と危険を極力さけ」る方針で編纂した大著。2008.7.8追加
      30. 飯部紀昭(1995)『アイヌ群像−民族の誇りに生きる−』御茶ノ水書房、275pp. *貝澤耕一先生を含め、総計25名のアイヌの方に取材している。2008.8.24追加
      31. 本橋哲也(2005)『ポストコロニアリズム』 (岩波新書)岩波書店、232pp. *amazon.co.jpに出ているレビューが面白い。アイヌに関する数頁(pp.190-196あたり)を見るだけでも価値がある。
      32. テッサ・モーリス=鈴木 [著] ; 大川正彦訳(2000)『辺境から眺める−アイヌが経験する近代−』みすず書房、262pp. *国民国家超克論に関して比類のない切れ味を見せる著者によるアイヌ論
      33. 本多勝一(1993)『先住民族アイヌの現在』(朝日文庫)朝日出版社、277pp.
      34. 三浦佑之(1991)「山」『言語』20(1)
      35. 渡辺仁(1952)「沙流アイヌにおける天然資源の利用」『民族学研究』16(3/4)、pp.71-82 *CiNii-PDF学内より利用可
      36. 泉靖一(1952)「沙流アイヌの地縁集団におけるIWOR」『民族学研究』16(3/4)、pp.29-45 *CiNii-PDF学内より利用可
      37. 神田リエ(1988)「伝説と童話の世界における森林(第10報)−“アイヌ叙事詩,ユーカラ”より−」『日本林学会東北支部会誌』40、pp.31-32
      38. 岩井雅史(1999)『二風谷ダム問題の展開に関する考察』東大林政学研究室卒業論文、30pp. *林政部屋内での閲覧可
      39. 麓慎一(2002)『近代日本とアイヌ社会』(日本史リブレット)山川出版社、96pp. *史実に基づく事実関係の整理という意味では入門的テキストだが、多原(2006)によってそのスタンスの一部を鋭く批判されている。
      40. 三俣・室田(2005)「環境資源の入会利用・管理に関する日英比較−共同的な環境保全に関する民際研究に向けて−」『国立歴史民俗博物館研究報告』123、pp.253-323
      41. 稗田一俊(2005)『鮭はダムに殺された−二風谷ダムとユーラップ川からの警鐘』2008.7.9追加 *2003年8月の台風10号による沙流川洪水の真相を追う
      42. 出村文理編「『アイヌ文化関係書誌の書誌』(国内刊行編)(抄)」、深井人詩編『文献探索 2007』所収、pp.280-300 *重要だが上級向け
      43. NPO法人 C・C・C富良野自然塾(2008)「”カムイミンタラ”を目指して−ゴルフ場を森に還す自然返還事業−」『人と国土21』34(1)、pp.52-54
        • ほんの3頁の紹介記事で詳細は不明だが、ちょっと気になるのでコメントする。
        • 「北の国から」で知られる倉本塾長の主宰するNPO。「ゴルフ場になる前にはシラカバ、ハルニレ、ナナカマド、ミズナラ、カラマツなど数々の樹種が混在し、その中をリス、キタキツネ、エゾシカ、ヒグマなどが歩き廻り、無数の鳥や虫たちが遊ぶ”地上の楽園”」だったが、2005年にゴルフ場は閉鎖。「神々の遊ぶ庭」という意味で大雪山一帯をさすアイヌ語「カムイミンタラ」にちなんで森林再生を試みる運動を始めてすでに2万本を植栽…というのだが、この記述が正しいとするとゴルフ場になる直前の林相はすでに和人が入った後の二次林や人工林であってアイヌの暮らしていた森林とはほど遠い。森林に戻そうという意図そのものは悪くないし、運動には、ときに判りやすいスローガンが必要。が、二次林に戻すならおそらく百年あれば良いけれど、アイヌの暮らしていた”カムイミンタラ”に戻すなら最低200年はかかるという認識が果たしてあるや否や。アイヌの暮らしには森のどんな動植物が必要だったかは、動植物が神々として登場する「神謡集」から学ぶことができる。21世紀のNPOが「環境」だけ見て「歴史」「社会」を見ていないようにみえるのは残念である。少なくとも二風谷の「ナショナルトラスト チコロナイ」にはきちんとした認識が伺われる…と思っていたら、チコロナイのウェブサイトの中の2005年11月27日付けのブログに、チコロナイの人たちが富良野自然塾を訪れ、現地を見学し「チコロナイのこれからの活動の参考になる所も多くありました」と記していました。短慮はいけない。
        • カラマツ伐採跡地問題にも、かつての土地ブームの名残りや、村外所有者・開発業者が絡むケースがある。

    • 「林分施業法」関係
      1. 東大北演監修 映画『樹海 第二部』(1973)  *「林分施業法」の映像による解説。これだけ観れば、林分施業法は素晴らしい、という感想を100人中99人が持つであろう。
      2. 宮本義憲(1982)「『林分施業法』の歴史的性格に関する一考察」『林業経済』 35(12)、pp.6-11
      3. 高橋延清(2001)『林分施業法−その考えと実践−<改訂版>』ログ・ビー有限会社、125pp.
      4. 宮本義憲(2002)「林分施業法の批判的検討」『林業経済』55(9)、pp.12-17 *誤植:p.15、下から4行目(誤)「御料林の国家思想」→(正)「御料林の黒化思想」
      5. 大橋邦夫・有永明人(2004)「東京大学北海道演習林初代主任・三浦常雄氏の『施業意見書』と『出張取調報告』−フォレスターのみた100年前の北海道の森林と林業−」『演習林[東大農附属演習林]』43、pp.213-258

    • その他北海道林業関係(カラマツ関係はこちら
        重要な註記
        1. 北海道林業関係の重要文献で、pdfで全文DLが可能なものがいくつかあります。例:北大図書館北方資料室データベース(北大ウェブサイト内)、『光珠内季報』(光珠内は、道立林業試験場の所在地。CiNiiでも検索できたはず)→施業史では加納博、生井郁郎の論文など、『(web版)林産試だより』(道立林産試験場の研究成果:カラマツ利用技術関係など)、等々。【道立林業試験場と道立林産試験場は別の研究機関です】
        2. ウェブで落とせないもので重要な雑誌は、『北方林業』(科学の森センター所蔵:前身は『北海道林業研究会会報』→このページではこの2つを区別せず『北林』とする)、『御料林』(林政研所蔵)など。
      1. 植村恒三郎(1916)「原生林を論じ併せて我國天然林施業法に及ぶ」『大日本山林会報』404、pp.**-** *当時ドイツは大面積皆伐作業法に100年の歴史あるも、経済社会の進歩に伴い「択伐法」「小林分作業」等のより理想的な施業を実施する機運にあるとし、当時の日本全体の林相からすればいきなり理想的な施業への移行が可能だが、コスト的に難しいとした。 2008.7.8追加
      2. 本多静六(1926)「北海道における外國針葉樹の造林について」『大日本山林会報』518、pp.**-** *樹種として、1.ドイツトウヒ、2.ストローブ五葉松、3.オレゴンパイン、4.欧州アカマツ、5.欧州黒松、6.欧州カラマツ、7.カナダツガ、の順に適性を論じている。当時、東大北演ではストローブの植付後12年を経ていたが、a.ネズミに強い、b.寒害に強い、c.成長が速い、などと高い評価を与えていた。ストローブはその後、北演では「売れない木」としてお荷物的存在になったと言えなくもない(最近は合板業者などが買い付けているようだが)。本多静六ほどの人物が、木材としての利用価値になぜ目をつぶっていたのかが不思議である。 2008.7.8追加
      3. 倉田吉雄(1935)「擇伐林の沿革と其の分布」『御料林』88、pp.**-** *欧州、とくにドイツ中部とスイスにおける択伐施業の歴史について、ドイツのダンネッケル(1929)を抄訳・紹介したもの。択伐が盗伐的濫伐を意味した時代から説き始め、ガイヤーがこれに積極的意味を見出した1860年代以降、スイスでは択伐が盛行し、ドイツでは懐疑視される。詳しくは本文。 2008.7.8追加
      4. 倉田吉雄(1936)「御料林施業規定の制定について」『御料林』103、pp.**-** *「御料林百年計画」の実現のため、「ヨーロッパ林業の翻訳的事項を排して山岳林業に適合する規定とした」という。ここでいうヨーロッパ林業とは、トウヒ一斉人工造林主義のことか。 2008.7.8追加
      5. 沖野丈夫(1937)「北海道御料林に於ける天然更新補助造林事業の概況」『日本林学会誌』19(12)、pp.554-561 *1928年の国有林「国有林施業集約度増進計画」に続き、御料林が採用した択伐天然更新は、翌1938年の北演第6期施業案に影響を与えた。CiNiiでダウンロード可。
      6. 寺崎渡(1950)『森林施業の基盤に基く北海道の森林施業に関する私見』(財)帯広林友会、73pp. *寺崎式間伐で知られる著者の、欧州林学から学んだ過程が語られている。寺崎自体は、北海道に3回しか訪れたことがなく、その学識経験を買われての招待講演。
      7. 北海道国有林施業協議会(1952)『北海道の森林施業に関する文献抄録』札幌林野共済会、264pp.
      8. 北海道(1953)『北海道山林史』 *本当はこれを読みたいが半期の実習にとってはあまりに大部。
      9. 津村昌一編(1953)『北海道山林史余録』北海道造林振興協会、130pp. *「森林植物に因める蝦夷語地名考」(pp.8-17)の中で、「アイヌの森林保存は、かれらの宗教として徹底しており、山に火をつけることは全く禁ぜられていた。従って、山火事は殆どなかった」としている。
      10. 小関隆祺(1962)「第三部 北海道林業史」『林政学研究』(北大図書刊行会)所収、pp.225-323 *基本文献【配付済み】
      11. 御料林技術資料刊行会編(1978)『樹海を育てた日々』北海道林業会館、511pp. *北海道御料林関係の一級資料集〜「用語解説」(生井郁郎)pp.133-141:宮本義憲論文で、北演林分施業法の前史とされる「天然更新補助事業」、第6期施業案が影響を受けたとされる「黒化促進策」など、北海道御料林の特殊用語の解説
      12. 谷口信一教授退官記念会編(1980)『林業の経営と森林施業』北大図書刊行会、496pp. *北海道が中心
      13. 大金永治編著(1981)『日本の択伐』日本林業調査会、370pp. *北海道のほか青森ヒバ、能登のアテなど 2008.7.9追加
      14. 加納博(1983)「照査法に関する基礎的研究−北海道置戸照査法試験林の分析−」『道林試報』21、pp.105-170
      15. 北海道林務部編(1987)『北海道有林における林業技術発展史−道有林創設80周年記念誌−』398pp.〜とくに久保田泰則「雑種カラマツの種子生産」pp.209-213猪川重徳「大面積皆伐作業の反省と天然林施業の導入」pp.237-245 *前者は、北演が発見したF1が道有林や私有林に普及した過程、後者は、道有林において戦前試みられた択伐が放棄され大面積皆伐作業に移行し、その反省から天然林施業が導入されてきた歴史が、それぞれ記されている。08.7.3追加
      16. 大金永治編著(1991)『森林施業・技術研究−理論と実証−』日本林業調査会、342pp. *北海道が中心

  2. 外部リンク
    • アイヌ文化交流センター http://www.frpac.or.jp/itm/jigyo403.html
    • 北海道大学アイヌ・先住民研究センター *法学部交告尚史先生よりご教示いただきました。趣旨説明のなかに
      • 「学際的構成を生かしてアイヌ・先住民文化の総合的研究を進めるとともに、先住民族研究の世界基準に従って、アイヌ・先住民の法的権利のあり方についても研究を進めていきたいと考えています。しかし、権利はただ主張すれば実現するというわけではありません。義務を負う側だけでなく、権利を主張する側にも、権利を行使するための体制の整備をはじめ、準備をしなければならないことや考えなければならないことがあります。当センターは、その客観性と専門性を生かし、国・自治体とアイヌ・先住民の双方に提言できる組織でありたい」
      • 「研究面そして運営面でのアイヌ民族との協同を基本方針としている」
      • 「北大の歴史には殖民政策の先駆けとして始まったという側面があることは否定できず、その後の歴史の中にも、大学としての基本姿勢が問われる問題があったことは事実です。これらの経験を深く記憶に刻み、そのうえで、多くの民族がお互いに理解し合い、支え合って共生できるような未来に向けた活動を進めていくのが当センターの責務」
      • 「かつて萱野茂先生が、アイヌ新法の制定の際に、法律の内容は十分とは言えないが、一本の苗木を植えることで枝葉がつき、花を咲かせることもできる、と話されたように、アイヌ・先住民研究センターも、まだまだ十分な体制と言うにはほど遠いものがありますが、ようやく大地に植えられた一本の苗木として、これから皆様のお力をお借りしながら、枝葉を延ばし、花を咲かせていきたい」とあります。
    • 2002年3月7日札幌地裁判決(北海道旧土人共有財産等返還手続無効確認請求事件)
    • UNITED NATIONS DECLARATION ON THE RIGHTS OF INDIGENOUS PEOPLES. Adopted by the General Assembly 13 September 2007 *これを日本の判例と比較すると、アイヌの人びとが日本の司法に絶望して国連の場で発言した必然性がわかる。奪われた土地などの「回復」権をうたった条項は、金銭的補償は最後の手段であり、どうすれば回復できるかが重要だが、その方法は先住民族が、その民族が伝統的に決めてきた方法によって決める権利がある、と高らかに謳っている。問題は、先住民族が、長年の差別や強制移住等によってそういった意思決定を行う体力すら奪われてしまっている現実であろう(北大アイヌ・先住民研究センターの「趣旨説明」第1段参照)。IWOR再生事業の意義はこうした文脈で理解することができる。2008年6月の日本の「国会決議」はアイヌを先住民族と認めることを政府に求めたが、「国連宣言における『先住民族』の定義と日本の国会決議のそれとの異同を議論するのは意味がない」という意味不明の官房長官談話が直後に出されたという。「議論したくない」と本音を言うのなら判る。「意味がない」といったとすればおよそ論理をなしておらず、政治家は裏で何を考えていようと、論理で勝負すべきであろう。英訳して国際記者クラブあたりで公表したら笑いものである。国会決議は、世界の専門家による長年の議論を経て成案を得た国連宣言(=先住民族研究の国際基準)を理解するための重要な出発点として位置づけたい。

    • 【G8洞爺湖サミット オルタナティブ】上村英明教授にアイヌ問題を聞く〜国や市民社会に求められる今後の課題とは *市民メディア「JANJAN」08/6/11付記事
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本ページは、東京大学大学院農学生命科学研究科における講義用資料です。お気づきの点がありましたら上記メールアドレスまでご一報下されば幸いです。オープンコンテンツはリンクフリーですが、内容の無断転載はご遠慮下さい。また、著作権は留保しておりますので、とくに営利目的の転載は固くお断りします。